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シェールガスの実用化が注目され始めた2008年前後から、米国のGulf Coast(メキシコ湾岸)沿いの地域ではエチレン関係の大型プロジェクトが相次いで発表されています。これらプロジェクトの多くは2017年前後に完成を目標としていることから、2014年から2016年にかけて工事がピークを迎えることが予測されています。しかし、過去50年間に米国ではここまで大型投資が同時に進行したことはなく、建設業界では労働者の確保に躍起になっています。
米国における建設労働者事情の現状や今後の見通しについて、各種専門誌を基に調査した結果を以下に纏めてみました。
1) 現時点で全米及びGulf Coastで発表されている大型プロジェクト
American Chemistry Council:
- 2014年2月のレポートによると、現時点では全米で148件のシェールガスに関連するプロジェクトの建設工事が進行中か投資計画が発表されています。
- これらプロジェクトの合計投資額は、約$100.2 billion(約10兆円)と言われています。
- 投資のピーク時期は2015年から2016年と見られており、2016年の年間投資額は約$15 billionと予測されています。
Industrial Info Resource:
- 2014年に、約$116 billionのIndustrial Projectの投資がTexas州とLouisiana州で開始されます。
- そのうち、約$70.9 billionがTexas州で、約$45.7 billionがLouisiana州。
- $116 billionのうち、約$47.35 billionがOil & Gas Production関係、$31.64 billionがChemical Processing。
- 既に公表されているエチレンプラント以外にも、Louisiana州のCameron LNGやTexas州のGulf Coast LNG Exportがそれぞれ$12 billionと$10 billionのLNG輸出基地の建設を予定しています。
2) 建設労働者の需要vs供給
- Gulf Coastで計画が進められている大型プロジェクトが同時進行することにより建設労働者が足りなくなることについては、建設専門誌、テキサス州やルイジアナ州の各種新聞で度々取り上げられています。
- また、Gulf Coast周辺の既存プラントでは通常のメンテナンス工事も行われることから、新規案件はこれらメンテナンス工事とも建設労働者の取り合いになります。
- 所謂熟練労働者は50代に入りリタイヤメントを考えており、逆に若い世代にとっては建設関係の労働は魅力的と見られていないことも建設労働者が足りなくなることの原因の1つと考えられています。
- プラント工事でキーとなるメカ工事や電気工事のサブコンも、テキサス州やルイジアナ州の地元紙で「労働者の賃金が高騰している中で工事の安請け合いは会社を潰しかねないので、みな周りの状況を見極めようとしている」とコメントしています。
- 現時点では、どの専門誌も大型プロジェクトがピークを迎える2016年に必要となる建設労働者の明確な人数は明言していませんが、エチレン関係のプラントであれば1プロジェクトあたり5,000人から10,000人が必要となると試算しています。
- Industrial Info Resourceでは、2012年から2016年にはプラント工事でコアとなる13種類の労働者(Welder、Pipefitter、Ironworker等)の需要は37%アップすると予測しています。
- 米国の大手エンジニアリング会社やケミカル会社は、大学とタイアップしてWelder等のトレーニングプログラムを設け、即戦力となる労働者の確保に力を注ぎ始めているとのことです。
3) コストの動向
- US Bureau of Labor StatisticsやTexas Work Force Commissionは毎年前年度の各種ワーカーのかなり詳細な賃金情報を公表していますが、2013年の賃金については今年の3月から4月にかけて公表される予定です。
- 尚、参考までにTexas Work Force CommissionでHouston-Sugar Land-BaytownでIndustrial Construction労働者全般のWeekly Wageの動向を調べてみたところ、2005年から2013年までに以下のコスト推移が見られました。
2005年第1四半期: $1,115
2008年第1四半期: $1,663
2013年第1 四半期: $2,024
- US Bureau of Labor StatisticsのProducer Price Indexを調べてみると、Input to Construction Industriesの指数はリーマンショック後最も低かったのは2009年3月時点の186.3ですが、2014年1月現時点では217.6となっています。
- Engineering and Construction Cost Indexでは、2012年1月から2013年11月までは22ヶ月連続で指数が上昇しているとのことです。
- 2017年以降のコスト動向については、建設専門誌、ケミカル専門誌、人材専門誌のいずれにも予測しているところはありませんでした。ただ、2017年以降は現在計画が進んでいる大型プロジェクトが完成しだすので、工場のオペレータ等の需要は高まりますが、建設労働者の需要については2016年のピークを境に下がるのではと見られています。
上記調査結果にもあります通り、労働者の不足により米国Gulf Coastの建設労働者賃金は2016年までは上昇する傾向にあります。2013年12月には建設費の高騰を理由にShellがLouisiana州でのGTL計画の中止を決定しました。工事期間中の建設費の高騰を避けるためには、投資時期と投資判断のスピードがキーとなります。
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